2015年4月18日土曜日

笹目川最上流域の有効利用を!

笹目川は、昭和期に開削された人工の川です。

この川は、さいたま市内の武蔵浦和駅近くの白幡沼を源泉として、北戸田駅周辺まで埼京線の東側に沿って南下し、戸田市に入ると、埼京線から西に離れて南下し、ボートレース戸田のそばで荒川に流れ込む総延長5.11kmほどの河川です。


このブログでは、

一、笹目川の開削時期の検証 ~「戸田市史研究」と古地図を読み解く~
二、笹目川最上流域の現状 ~武蔵浦和周辺の笹目川は細いどぶ川にすぎない~
三、笹目川区域の活用の提言 ~戦前は農業のため、現在は住民のため!~

の順で、笹目川最上流域(白幡沼~白幡堰)を活用した武蔵浦和駅周辺の公園不足対策を提案します



一、笹目川の開削時期の検証 ~「戸田市史研究」と古地図を読み解く~


☆笹目川は昭和10年に、排水と農業用水路として掘られた人工河川である☆

1、「戸田市史研究」より

「戸田市史研究」8に笹目川の開削工事の記述があります。
P.66に「この中央排水路は、排水路としての目的の他に、水田の灌漑用水を確保供給することもその目的のひとつとされた。そのため、下流部に谷口堰(笹目村谷口地区)、中流部に美女木本堰(美谷本村美女木地区)、上流部に白幡堰(六辻村白幡地区)を設置して、排水兼用水路として整備された。」との記述があります。
白幡沼を水源としたものの、それだけでは農業用水としての安定した水量が確保できないため、数カ所の堰から注入せざるを得なかった模様です(今回取り上げた場所は、白幡堰よりも更に上流で、最初から水量が少なかったと言えます)。
現在、さいたま市南区と戸田市が住宅地と変貌を遂げたことから、水田の灌漑用水としての用途は無くなっており、笹目川は排水機能のみに留意するべきであると言えます。
P.67には笹目川開削工事(昭和10年)の注入りで工事の様子を写した写真が載っています。笹目川の工事に関連した公文書類は昭和22年10月の埼玉県庁の火災ですべて焼失したようなので、この写真も工事の日程を確定する一つの証拠になると思います。

2、「古地図」より

また、「地図で見るさいたま市の変遷」(さいたま市の古地図)を見ると、Ⅰ(1885年・明治18年)~Ⅲ(1929年・昭和4年)の三つの地図からは、白幡沼から流れ出る川は記載されていません


同様に、1945年(昭和20年)12月に作成された戦災概況図(復員帰還兵に向けた地図)にも笹目川は記載されておりません。





二、笹目川最上流域の現状 ~武蔵浦和周辺の笹目川は細いどぶ川にすぎない~

☆笹目川最上流域は細いどぶ川で、河原は立ち入れない荒地。公的な管理計画からも外れている☆

まず、現状を写真で確認し、次に公的資料を確認します。

1、現状の確認

武蔵浦和駅南東側の笹目川最上流部(赤線部)
 グーグルマップより
人口排水路の笹目川は、最上流部であるさいたま市内では年に数度の草刈りをされる以外は荒れ地になっています(全域が柵により立ち入りできず)。
また、下の写真のように、白幡沼から1キロ程度の部分は、大雨警報が出された後でも、水量の変化はあまり見られなくなりました。
2014年6月8日18:28
大雨警報の出された後の様子を撮影@瓶尻橋
同時刻に、瓶尻橋から戸田方面に向けて撮影












2014年7月3日 中曽根橋より 草刈り前の様子

同時刻に、瓶尻橋から白幡沼方面に向けて撮影


2014年9月27日 白幡橋より 草刈り後の様子

2015年1月24日に戸田市内の富士技研工業第二倉庫脇で撮影しました。
同じ笹目川でもずいぶん違います。
これなら「暗渠化」は思いつきません。

2、公的資料より


国土交通省の荒川下流河川事務所の笹目川浄化導水事業の資料から

まず、リンク先のpdfファイルの一ページ目に、「また、笹目川最上流部約1kmの区間は、常時の流量が極めて少ない状況にあります。」と記述されています。

北から南に向けた写真。
右に埼京線、正面が外環自動車道。
写真は白幡堰よりも下流で、「最上流部約1kmの区間」ではありません!


また、リンク先のpdfファイルの三ページ目には、笹目川浄化導水事業の地図がありますが、計画範囲は、左端の荒川と合流する部分から右端の内谷橋までに限定されており、最上流部分は除外されています。







三、笹目川水源区域の活用の提言 ~戦前は農業のため、現在は住民のため!~

☆子どもたちの遊び場と住民の避難場所が、現在のあるべき姿☆

笹目川最上流地域は、公園整備がさいたま市都市公園条例の目標とする数値の426分の1以下にとどまっています
この区域の活用について、
1、暗渠化等による公園面積の増加 と、
2、サイクルシティさいたま計画 をリンクさせた活用法を提言します。

1、暗渠化による公園面積の増加

笹目川最上流地域は、地図上左岸(西側)が白幡5丁目、同右岸(東側)が白幡4丁目と6丁目です。
平成26年12月1日のデータでは、4丁目に4618人、5丁目に2299人、6丁目に2626人の計9543人が在住しています。
さいたま市都市公園条例1条の2で、4.77ha(47715㎡)の公園が整備されることになっていますが、実際には白幡5丁目公園0.0112ha(112㎡)(リンク先の15番目の公園)しか整備されていません。
これは、ルールの426分の1です!
この地域の中央に位置する笹目川最上流地域を公園として活用すべき必要性は極めて高いと言わざるを得ません(いつまで子どもたちを公道やマンション廊下で遊ばせておくつもりですか)。

和泉川は笹目川と違って自然河川ですが、必要に応じた活用がされた例として、参考になると思います。
笹目川の最上流部分の幅は、18m~24mもありますから、児童公園エリア、ボール遊びエリア、川遊びエリア、自然保護エリアなど、必要に応じた整備をして、住民の憩いの場として活用すべきです。
また、関東大震災で被害の多かった地域に9,500人以上の住民が居住しているにも関わらず、避難場所が一カ所も整備されていないという異常事態も、この土地を活用して改善すべきです。
現在のように立ち入りが出来ない荒地のままにしておくのはあまりにもったいないと思います。


2、サイクルシティさいたま計画との関わり

荒川サイクリングロードは、東京の葛西臨海公園から埼玉の森林公園や熊谷を結ぶ人気のサイクリングコースです。
私自身は小5の夏にこのコースを北上して川島町の鳥羽井沼(とばいぬま)に行って以来、森林公園や川越市街地までたびたびサイクリングを楽しんでいます。

さいたま市自転車まちづくり推進課のパブリックコメントに「サイクルシティさいたま計画」として出した意見の一つの柱が、「さいたま市内をサイクルスーパーハイウェイ(自転車道)で網羅する」ということでした。
下図は、自転車まちづくり推進課の資料に赤線で荒川、青線で笹目川を追加したものです。

サイクリストで賑わう荒川サイクリングロードは、さいたま市の西端をかすめるだけですし、途中に魅力的なスポットなどはほとんどありません。
そこで、笹目川をさいたま市内自転車道への重要な導線と位置づけ、戸田市と協力して笹目川の整備を進めて、さいたま市内に観光スポットやカフェなどを整備していけば、多くのサイクリング愛好家を市内に迎え入れることが可能になると思います。

まとめ

笹目川流域は、昭和初期は田んぼに囲まれた地区でしたから、ここを開削して川を作り、農耕のために活用したのは賢明な判断でした。

時は流れ、現在、この場所は市内最大の住宅地となり、公園・避難場所を確保することが地域の緊急の課題になっています。
しかし、地域の住民にとって大切な場所が、たまに草刈りをするが立ち入りはできないままで放置されています。

住民と行政が知恵を出し合い、時代の必要に合わせて土地を最大限に活用していきましょう!!