2015年1月14日水曜日

「(仮称)さいたま自転車総合利用計画 自転車まちづくり大綱(案)」に提言を出しました。

さいたま市の自転車まちづくり推進課が自転車総合利用計画への意見を公募していたので、提言を出しました。

正月に茨城県の教育関係で行政の仕事もしていた岳父と話をしたときに、「小学生・中学生の時代は、その子にとってかけがえのないものだから、行政もそれを尊重しないといけない」と言われました。

さいたま市南区の公園整備が大幅に遅れていて、子どもたちが外遊びがしづらい状況におかれています。
しかし、自転車道でルートを明示して、「2キロ先に行けば別所沼公園があるよ」とか「戸田のボール遊び広場はこのルートで行けるよ」と誘導してあげれば、現在の公園資源をフルに活用できるのではないでしょうか。

「これから50年かけて内谷中学区に20ヘクタールの公園を作ります」では、今の子どもたちには何も届かないのです。
どうせやるなら、ワクワクするような街づくりをして、子どもたちには公園が無いことに気付かずに成長してほしい。
さいたま市には日本における自転車まちづくりのさきがけになって欲しいと願って、提言を出しました。

以下の長文ですが、文字数制限にかかったので、半分ずつ提出しました。




(文字数制限を超えたので、(1/2)と(2/2)の二通で提出させていただきます。)


さいたま市役所 都市局 都市計画部 自転車まちづくり推進課 自転車政策係 御中

さいたま市の自転車総合利用計画について、ご意見を申し上げます。

「サイクルシティさいたま」実現に向けたご提言

2015年は、さいたま市の自転車利用の機運を盛り上げるために極めて大切な年です。
なぜなら、今年はさいたまクリテリウムが始まって2年が経過し、2019年ラグビーワールドカップと2020年東京オリンピックまで4,5年を残す年だからです。
ですから、今からさいたま市がやるべきことを成果として積み上げていけば、さいたま市の可能性を無限に引き出すことができるし、そうしなければ、自転車部門で他の自治体の後追いをするだけにとどまるでしょう。
大河ドラマで話題の吉田松陰の言葉に、「なにごとも ならぬといふは なきものを ならぬといふは なさぬなりけり」とあります。
やっておおきな成果を引き出すか、やらないで何も成し得ないかは、さいたま市の姿勢次第です。


以下、
(1)さいたまサイクルスーパーハイウェイ(SCS)
(2)レンタルサイクール
(3)さいたまブランド自転車・SYCOOL(埼涼)
を三本の矢として提言いたします。


(1)さいたまサイクルスーパーハイウェイ(SCS)計画

2019年にはラグビーワールドカップ日本開催(サッカーワールドカップやオリンピックに次ぐ世界規模の大会。激しいスポーツなので日程に余裕があり、観客の滞在日数が長いのが特徴)、2020年には東京オリンピックが開催されます。
ラグビーワールドカップでは熊谷ラグビー場が会場に立候補し、東京オリンピックでは埼スタ2002でサッカーの試合が行われる等の予定になっていますから、相当数の観光客が見込めます。

ですから、自転車環境の整備においてさいたま市が学ぶべきは、2012年オリンピック、2015年ラグビーワールドカップの直前に、ボリスジョンソン市長が「カーレス・オリンピック」を宣言して、独自の自転車政策を断行したロンドンです。

ロンドンの自転車政策の一つの目玉が、「サイクルスーパーハイウェイ」です。
自転車道の整備で心がけるべきは、「一部の区間に自転車道なり自転車レーンなりを敷設しても、見向きもされない。」(秋山岳志「自転車が街を変える」集英社新書 P.185)ことです。
武蔵浦和駅に数十メートルの自転車レーンがありますが、あれでは地元の人間でも気づきもしません。

さいたま自転車まちづくり大綱P.14の地形の平坦性に加えて、さいたま市には新方川・元荒川・綾瀬川・芝川・鴻沼川・鴨川・荒川と、実に多くの河川が南北に流れているというメリットがあります(川沿いのサイクリングは快適です)。
これらの河川に沿ってSCSを設定した上で、東西に通る主要道にSCSを整備すれば、区を越えた移動が楽になり、サイクリングも市内で十分に楽しめるようになるでしょう。

また、戸田市と南区を結ぶ笹目川は、葛西臨海公園から熊谷を結ぶ「荒川サイクリングロード」と接しているので、戸田市と協力して笹目川にも自転車レーンを設定すれば、都内からのサイクリストをさいたま市内に誘導することができます
荒川サイクリングロードでは、まだカフェやグルメスポットの整備は進んでいませんので、開拓する余地が十分にあると思います。
私自身も東松山の森林公園などへサイクリングすることがありますが、サイクリングロードはただひたすら河原やゴルフ場が広がっているという印象で、秋ヶ瀬公園から森林公園までで、寄りたいスポットは榎本牧場くらいしかありません。

すでに御課でも把握されているとは思いますが、SCS整備のためには、既成の行動に1m程度の自転車レーンを塗装することと、標識を設置すること(古倉宗治「成功する自転車街づくり」P.121,122)で足ります。
「歩道走行により事故の確率が高くなる」(日本交通法学会「自転車事故に関する諸問題」有斐閣 P.6)のですから、自転車用レーンは、事故防止にもつながります。
ですから、大きな絵を描いて早急に自転車レーンを設置して行くべきです。


(2)レンタサイクール

(名前は、(3)のさいたまブランド自転車をコミュニティサイクルとして活用すべく、愛称を考えたものです。)

ロンドンの自転車政策の二つ目は、オリンピック開催2年前の2010年に開始したシェアサイクル(ボリスジョンソン市長の名前を取って「ボリスバイク」とも)です。
特筆すべきは、400以上の24時間利用可能なドッキングステーションが設置され、移動先のステーションに返却できることです。

さいたま市なら、まず、JRや私鉄の駅全てにチャリンク・ポート(自転車で地域をリンクさせる意)を設置すべきでしょう。
それから、SCSで結んだ公園や観光スポット、スポーツ施設などにもチャリンク・ポートを設置します。
そうすれば、駅でレンタサイクールの利用を開始し、各所を巡ってから、任意のチャリンクポートに返却するという形での利用者が見込めると思います。

ロンドンのボリスバイクは、初期登録料が1ポンドで、30分以内に返却すれば無料、60分以内なら1ポンド…という料金です。
おすすめコースなどを随時発表してメディアにもアピールするなどして、SCSとレンタサイクールを併用したさいたま市内観光を推進できれば、市外からサイクリングを楽しむ観光客を呼び込むことが出来ると思います(地場野菜を利用したカフェなども話題を呼ぶのではないでしょうか)。

さらに、他の市町村や都道府県にチャリンクポートを設置できると、さいたま市民のレンタサイクール利用も増えるはずです。
例えば、川越の駅前にチャリンクポートがあれば、我が家(夫婦と小学生と中学生の子どもがいます)でも、片道20キロ程度の道のりを荒川サイクリングロードを経由して川越駅前観光をして、帰りは自転車を川越駅前のチャリンクポートに返却して、鉄道を利用して戻ってくるという休日の過ごし方も可能になります
このルートは、僕1人で折りたたみ自転車で往路を移動し、復路を電車で輪行したことがありますが、家族で楽しめたら、なお楽しいと思います。
越谷レイクタウンも20キロ程度、森林公園なら40キロ程度、往復しなければならないとなると、きつくなりますが、片道なら楽しめる家族も多いと思います。


(3)さいたまブランド自転車・SYCOOL(埼涼)

「自転車が街を変える」(秋山岳志 集英社新書)の192頁に、2012年にイギリスのキャメロン首相が野田総理にお土産に持参したものが自転車(ブロンプトンというイギリスのブランド、総理の名前の刻印入り)だったとあるのを読んで、ドキリとしました。
僕自身、通勤用のクロスバイクと、レジャー用の折りたたみ自転車を所有していますが、どちらも海外のブランドです。
埼玉県には丸石サイクルや丸金自転車などの有名自転車メーカーがあり、オリジナルブランドのロードバイクも作っていますが、他社製品も含めても、僕自身が国産のスポーツバイクの購入を考えたことはありませんでした。

2014年には、埼玉県の自転車出荷台数が全国でトップになっています。
ですから、市と県で手を組んで、SYCOOLブランドを育てていくのは夢物語でもないと思います
それほど規模は大きくはありませんが、トーキョーバイクというブランドがあります。
大人向けですと、29000円-68000円のスポーツバイクを販売しています。
SYCOOLブランドで、3万円・5万円・7万円の三つの価格帯で「ちょっと高いけど、乗れば明らかに違う」ようなスポーツバイクを展開するなど、アピールはいろいろとできるのではないでしょうか。
クリテリウム関係で市長が渡仏するときに持参して、喜ばれるような品質の製品を目指すべきだと思います。

SCS等のサイクリングロードは、ママチャリでなく、スポーツサイクルなら、行動半径が大きく広がります。
「「ママチャリ以外の自転車」に乗ってみるのだ。そうした自転車は、どんなジャンルであれ、自転車本来の性能を持っている。誰がペダルを踏んでも、時速二五kmが不通に出る」(疋田智「快適自転車ライフ」岩波アクティブ新書P.35)ものです。
時速25キロですと、サイクリングロードで2時間進めば50キロ先に移動できます。

震災発生時に活用することを考えれば、パンクしにくいなどの工夫も欠かせません。


以上が、今回の三本の矢として提案させていただいた内容です。


最後に、災害、公園不足、高齢者の健康促進への所見を述べさせていただきます。
(2/2へ続く)

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(2/1からの続き)
さいたま市でも大規模地震災害が想定されていますが、1923年の関東大震災でさいたま市内で特に甚大な被害の発生した武蔵浦和駅周辺には、人口増加が続く中で避難場所はほとんど増設されていないため、震災が発生した時には大きな混乱が予想されます。
このように、在住人口と避難場所の収容数を比較して対策の遅れている地域では、SCSとレンタサイクールを、避難経路と移動手段の確保という面も持たせて整備していく必要があります。

武蔵浦和駅に近い内谷中学には県内で最大の生徒数が在籍し、学区内に4万人以上の住民がいますが、公園整備はさいたま市都市公園条例の設置目標の20分の1以下と、ひどい状態です。
1月12日(月・祝)に中1の長男が沼影市民プールの「のびのび広場」にバスケをしに行ったところ、学区内で唯一ボールができる「のびのび広場」が無料駐車場として使用されていたために、グループで戸田市の公園まで移動したそうです。
公園不足地域では、SCSを通って安全に公園まで誘導してあげる必要性は極めて高いです。
また、戸田市は震災発生時に、さいたま市方面に避難する計画を立てているものの、具体的な避難場所は明確にできないでいます。
南区の子どもたちは、公園以外にも、図書館やスポーツセンターなどの戸田市の施設を利用させていただいているのですから、震災発生時には戸田市民の方にもSCSの避難経路の利用を促してあげるべきです。
さもなければ、いざというときに、戸田市民はただ闇雲に南区に逃げ込んでくることになり、大混乱になるでしょう。

次に高齢者の健康促進対策についてです。
自転車まちづくり大綱P.41にあるように、高齢者の事故は、発生率は高くないが、重症以上の被害を受けやすいことが分かります。
ですから、倒れにくい自転車の活用や、ヘルメット利用普及など、できる策を積極的に採用していただきたいです(古倉宗治「実践する自転車まちづくり」学芸出版社P.128以降に詳しい)
近所に住む70代の両親は、さいたまクリテリウムの応援には行きましたが、サイクリングを楽しむ習慣はありません。
理由の一つは、自転車で気軽に行ける魅力的な目的地がないことだと思います。
SCSで各区の名所を自転車で巡れるようにして、高齢者の健康増進にもつなげていただきたいと思います。



今回提案申し上げた「サイクルシティさいたま」のサイクル(cycle)は、「自転車に乗る」以外に、「循環する」や「輪」の意味があります。
子どもたちから高齢者まで、世代を超えた人々が自転車でさいたま市内を巡る。
そして、ここで成長した子どもたちが、さいたま市で子育てをして、やがて年老いていく。
こんなふうに、空間・時間軸の両方で人々が循環していってほしいという思いを、「cycle」という言葉に込めました。

これから、自転車が街やライフスタイルを変えていく時代になるので、さいたま市にはそのモデルになる気概を持って、自転車まちづくりに取り組んでいっていただくことを期待しています。
その結果、たくさんの人々に「さいたま市に住んでいていよかった」「さいたま市にぜひ住みたい」と思われて、さいたま市のブランド力も向上していくはずです。



藤原俊裕